海岸屋ふー通信


海浜住宅建築舎
by kaiganyafoo
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道具屋さん

なんか道具屋っていうと
与太郎の出てくる落語みたいだけど
これは本当の道具屋のはなし

先日 八日市場の町を見て歩いたとき
水曜日は定休日らしく みんな休みだったので
金曜日の仕事の手待ちのあいだに また行ってみました。

加瀬刃物店。

だいたい刃物を名乗っていること自体がわりと珍しいです。
でも 行ってみたら本当に刃物の店でした。
道具屋さん_a0157159_1221348.jpg

これは店で貰ったパンフレットです。
刃物の良否
刃物の研ぎ方
鋼とは  などと書かれていて
刃物一筋に生きる とも書いてあります。

気合 入ってんなぁ。
鑿は長弘
鋸は保蔵
鉋は問屋銘のところが昔風。

お勧めの大工道具がちゃんとあります。

長弘は ながひろ と読みます。
永弘(ながひろ) という新潟の名門鍛冶がいますので
混同しないようにそう言っているのかもしれませんが
鑿はおさひろではなく ながひろ。

海岸屋は小松川の長弘さんの自宅まで行って
本人に聞いたんだから間違いない。
それで もう高齢ですから あんまり作らないと思うけど
ここの店には 古くからの道具があって まだ買える。

鋸は保蔵。
保蔵は千葉の鋸鍛冶で 亀井町だと思います。
帰ってきてから 先輩の大工とか
付き合ってる道具屋さんとかに聞いたら
みんな知ってました。
「いい鋸だったよ 目立てがうまくてさぁ 切り口がぴかぴかなんだよ」
とは先輩の談。
ざくざく切れるような薪挽き鋸の目立てとは違う ということだね。

でもそこは もう鋸は作ってない。
ここのような店に残ってるものを探すしかないんだな。
店の奥さんも
「うちは雄蔵よりも保蔵のほうがいいと思って ずっと昔からそうしてます」
とおっしゃってました。
房州の雄蔵は舟鋸で有名で デパートやなんかの
物産展とかにたまにでています。
現役の鋸鍛冶として 貴重な人です。

奥さんの話と書きましたが この店は
ご主人はもう亡くなっていて 店を守っているのは 奥さんと娘さん。
娘さんで三代目になるらしいけど この人も道具好きでした。

いくつか道具を買ってきたけど こんなかんじ。
道具屋さん_a0157159_1482567.jpg

油を引いて 丁寧な梱包だな。
道具屋さん_a0157159_1491460.jpg

道具屋さん_a0157159_1494431.jpg

鑿は長弘です。
六分の鉋は伊助とありますが これはおそらく問屋銘。
新潟の佐藤さんの鉋によく似ています。
八分は秀奴とありますが これも問屋銘でしょう。
この特徴ある花押はどこかで見た気がするんですが 思い出せない。
道具屋さん_a0157159_1545688.jpg

わかりますかね?
ものすごく 鋼が薄い。
これだけぬるく研いであるのに すごく薄く見えるっていうのは
いままで新品の鉋で見たなかでは 一番薄いくらい。

さて
店のなかで長々と話をしてきましたが
日本の大工道具は たぶんもうダメだろう ということのようです。
職人があまりにも道具を使わないから
鍛冶屋が生き残れない。
ほんの少しの若手の鍛冶屋も 厳しい競争で鍛えられることがないから
高級品というか 嗜好品の道具になってしまって 昔のような
実用品であって すごい というような道具は作れない。

日本人が今の価値観を180度変えることでもないかぎり
このまま すこしづつ大工道具は滅びていくだろう ということです。

昔だったら売らないような看板道具も
この人なら というような職人にゆずってきて
もう それほど在庫もないので 一見の人や
コレクターには 売りたくないそうです。

道具屋さん_a0157159_265513.jpg

写真がうまく撮れてないけど
先代の店主が鍛冶屋に道具を作らせたときの型です。
木型を自分で作って 鍛冶屋に渡すんだね。
道具や使い方について 相当詳しくないと こんな事はできない。

人と人
人と道具の幸福な関係が かつてあった という名残です。

さあ こういった文化を見捨てて
これから私たちは どんな生き方を目指すんでしょうか。

海岸屋的には だいぶ重い課題です。

by kaiganyafoo | 2010-05-31 02:14 | 大工道具 | Comments(0)
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