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このあいだ読んだ本。
本田靖春著 「誘拐」 ちくま文庫で¥800 海岸屋くらいの年齢の人だったら みんな知ってる 「吉展ちゃん事件」 (よしのぶちゃんじけん)の本。 著者は新聞記者あがりのノンフィクション作家 海岸屋は吉展ちゃんと同じ年齢だから その時代の気配というのを知っていて だから 割引をして考えなくちゃいけないかもしれないけど この本は 名著だと思います。 犯人探し という簡単な視点ではなく この事件が起きた原因を 時代背景から描き出してゆく その描写力は 特筆ものです。 貧困 無知 暴力 差別 世界には 人が克服しなくてはいけない課題というものがいくつもありますが それらを乗り越えようとする努力の積み重ねの先に 現代の我々の生活がある ということを あらためて思い起こさせられます。 もちろん 私たちは 理想的な世界を手に入れたわけではありません。 けれど 「吉展ちゃん事件」当時の日本と 今の日本は 同じ国とは思えないほど変わりました。 本田靖春の筆は 誰をも責めることなく かつての我々の姿を ていねいに描き出しますが その視点には 人々への愛情に満ちているように思われます。 この事件の直接の被害者の吉展ちゃんはもちろん 刑の執行によって命を絶たれた 犯人の小原も 被害者の家族も みんなが時代のうねりに翻弄された ただの人ではないだろうか。
by kaiganyafoo
| 2010-04-23 09:34
| 読んだ本
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